OJAEとは、口頭産出力アセスメントに関する先行研究(ALTE欧州言語試験者協会[i],
CEFR-JFスタンダード[ii]、Cambridge ESOL[英][iii]、DELF-DALF[仏][iv]、Profile Deutsch-MÜNDLICH[独][v]等)を基にEIJaLE-OJAE実践研究チームが開発した日本語口頭産出能力アセスメント(以下アセス)評価法であり、下記の6点を主な特徴とする。
①登壇者の自己申告レベル(CEFR表2:共通参照レベル:自己評定表-6段階:
A1-A2; B1-B2; C1-C2) をアセスする。
②「2-2」アセス実施形態:評価者2名(発題・評価及び実施記録・評価)と登壇者2名。
③アセス実施:「OJAE設計図:53言語機能」に基づく発題設定→アセス・スクリプト(台本)→スクリプト通りに実施し、発題者側の発話はタスク発問に限定する。A:10〜15分、B:
17〜20分、C:20〜25分間で言語産出・コミュニケーション能力を観察する。
④登壇者発話は3種:⑴インタビューに応えての「独話」、⑵「独話」(1人で続けて話す)、⑶「交話」(登壇者同士2人で話す)。
⑤「レベル合否判定・コミュニケーション評価」は、2種行う:〈1〉CDS(Can-do-Statements)採択
「CEFR準拠:OJAEレベル判定基準表[vi]」基盤の「口頭産出力5領域評価」[vii]と〈2〉アセス全体を通してのコミュニケーション具現度である。〈1〉の5領域とは、⑴言語表現使用幅(H)、⑵正確さ(S)、⑶流暢性(R)、⑷結束性(K)、⑸交話(I)を指す。評価者は、「5領域+総合評定」
に立脚して6段階で「レベル判定」をし、該当レベルの「合・否の判定・評価 Assessment」をすると同時に、各登壇者のアセス中のコミュニケーション遂行度を評価する。
⑥「OJAE的評価力」は評価者間で持たれる「キャリブレーション標準化会議」への参与を通して鍛錬される。
OJAE口頭アセスメントは、表現産出力を言語発達・構築上普遍的なCEFR準拠尺度に照合することにより、登壇者は日本語習得の進捗状況の自主モニターを通してその状況把握から「次なる学習項目は?」という習得上の質問に対する答えを獲得することができる。さらに、発題・評価者(授業者)は、キャリブレーション標準化会議への参与を通して、自身の「評価結果」を他評価者と比較・検討する体験学習を続け、専門家としての「評価観点の眼」を鋭敏化していく。日本語教育に於ける究極の目的は、双方が「地球市民」となることである。
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[i]
以下、本論文全註及び文献に記されるWebアクセス最終日は2010.10.15.
ALTE
– The Association of Language Testers in Europe. http://www.alte.org/.
OJAEは、理論・実践的基盤を「欧州言語教育参照枠CEFR」に求め、ALTE に2008.2月にグループ会員加入を認められる。なおALTEはEQUALS
(The European Association for Quality Language Services http://www.eaquals.org/)との共同研究体制の中にあることから、OJAEは欧州他言語への「比肩化・等化」(後述)という困難な課題を遂行していくに当たり両団体からEU内でのテスティング研究機関としての質的向上面でも恩恵を受けたいと願っている。
[ii]
JF 日本語教育スタンダード 国際交流基金。
[iii]
ESOL (English for Speakers of Other Languages: http://www.cambridgeenglish.org/)
, またはCambridge ESOLは、「英語検定試験の老舗」であるケンブリッジ大学英語試験部門が欧州CEFR、Assett Languages (英国政府委託のケンブリッジ評価基準採択の日本語も含む全27言語評価サービス:www.assetlanguages.org.uk/)との連動体制で実施しているテスティング・評価法である。上記サイトは、「学習者・授業者・教育機関など」のそれぞれのニーズに対応するその情報量の多様さ、また「寛容性」において「21世紀IT革命」を理想的な形で具現化していると言える。OJAE代表山田は英国ロンドンでESOL側とコラボレートするテスティングのエキスパート、Prof.
Dr. Barry O´SULLIVAN, Roehampton University, London, Applied Linguisticsに2010.4.25に「東京財団助成支援」により口頭能力試験に関する指導を受けることができた。この「コンサルタント・セッション」は、究極的にOJAEに「スピーキング・アセスの青写真」(設計図)を齎した。同教授ご教示の「状況・機能主義的内容基盤のスピーキング・アセス全般に亘る機能主義的観察チェックリスト」は、OJAEにとっての実り多き理論的再出発となったと言える。
[iv]
DELF-DALFは 教育研究国際センター(CIEP、Centre international d’études pédagogiques)が実施する「外国語としてのフランス語」試験。
[v]
Mündlich[口頭試験]Bolton他著(2008)は、上記「英語・仏語」に相当する「独語版」であるが、前者と異なり出版社を通しての発刊なので有料。しかし独語版は実際のレベル確定会議の詳細な「報告」を含み、DVD具体例との関連も明確であり「教則本」的役割を果たす。従ってOJAEもリール発表後、本書の具体的評価法・理由付け及びドイツ語CEFR参照本 Glaboniat他著(2005)Profile Deutsch(以下PD)の「先行研究的価値」に拠って、ドイツ語母語者対象のOJAE試行版の作成をしてきた。OJAE研究開発途上で「目下欠損している点」として研究課題が顕化してくるのであるが、その意味でOJAEがこの両書「PD及びMündlich」に負うところは大きい。
[vi]
CEFR共通参照枠「表1:全体的な尺度」、OJAEアセス設計図、言語行為論、コミュニケーション場面モデル(JAKOBSON, Roman, 1960, “Closing Statement: Linguistics & Poetics”)などの先行研究を基盤にOJAEチームが開発したもの。
[vii]
CEFR共通参照枠「表3:話し言葉の質的側面」は、OJAEチームにより新規翻訳された後、”Section A1: Salient Characteristics of CEFR Levels Chapter 1”, in North, 2009,(OJAEチーム日本語訳)も参照にして作成された。